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河畔林、サクラマス

【河川に及ぼす森林の影響】

現在までの研究では森林の水質保全機能の定量的な数値は十分に解明されていないと言われるが、一般的に生態系には重要な存在であると認められている。

  1. 落葉は川の虫、バクテリアの栄養源である、よって食物連鎖により魚にも及ぶ。
  2. 河川林から落ちる虫、幼虫は秋口まで河川の魚などの重要な食料である。

〈渓流内設置の広葉樹分解速度研究より(柳井、寺沢1995)〉

  1. 広葉樹の葉は針葉樹に比べ分解が早い。
  2. 広葉樹で分解され易いグループ... ハンノキ属
    中間グループ... カエデ、ヤナギ属
    分解され難いグループ... コナラ属、ブナ属、トチノキ

葉を食べる水性昆虫としてコカクツツトビゲラ属の幼虫が重要(積丹川)

これらの生息密度の高い厳冬期に葉の分解が進み、c-n 比の低い葉の分解が早い(窒素含有量の高いものに嗜好性)

(人工的に環境を造っても繁殖活動は有る。)

アメリカ、カナダなど大平洋沿岸諸州では河畔林の保護帯の設定が法律で義務付けられている(U.S. Forest Service)。

【河畔林の及ぼす影響・(サクラマス=降海個体、ヤマメ=河川残留個体の例)】

桜の咲く頃雪融け水にのり海から溯上、滝や淵に潜み10月頃の産卵期まで餌はほとんど取らず、卵の成熟を待つ。
溯上親魚は岩手県安家川の場合、ほとんどが雌といわれ(人工放流のためか近年雄が増えているとも言われている)産卵受精は主に河川に残ったヤマメの雄によって行われる。
産卵された卵は春にふ化し5月頃スモルト化(銀色化)したヤマメは海へ下り、雄は河川に残り翌年遡上するサクラマスを待つ。
サクラマスの生息限界温度は25℃以下、26〜28℃で死亡する。(左藤1997北海道)・・・写真は河口を上るシロサケ



サクラマス幼魚の移動性

0-(礫の中から浮上して1年未満の幼魚)は20m以下の移動性しかないもの70%、100mを越えて移動したもの15%(青山1996)。0+(礫の中から浮上して1年以上の幼魚)は、月ごとの移動性調査においても定着場所から50mの範囲内である。

0+は100mを越えて移動するものも見られた、特に産卵期に上流に移動し、最大移動距離は1120m(積丹川)。


写真は安家川唯一のアユ簗場。布団篭やヤナが完全に川を遮断、魚を逃がさない。法律では許されても自然の掟に背いている。
これを岩手県では許すのか?自然に優しい行政ではないと思うが。
いかに許された期間でも全部川をふさぐのは安家川の評判を落とす。
河口の鉄製ヤナもだが。


〈サクラマス(ヤマメ)への河畔林の影響〉

天然稚魚の生息場所は植生の繁茂し水中カバー(木の枝、笹、倒木など)の有る、流速の遅い川岸に集中する(平均体長3.5†B4・5B4・5月頃)。6〜7月は水中カバーの少ない流速の早い流心ヘ拡大する(永田1997)。

水中カバーの有る所は無い場所に比べ1.5倍程度サクラマスが集まる。水中カバーの重要性は他の魚にも共通する(長坂、遊磨1995)。

冬期は流速の遅い河岸植生下に潜む傾向が有る(左藤、積丹川調査グループ)、冬期はほとんど餌をとらない。


上の梁に入った魚たち。アユ、ヤマメ、イワナ、ハヤ、カジカ、時にはウナギも入る、海に戻り再び戻ってくる魚たちを一網打尽だ。魚を海に戻らせることで、人間も恵みが増えるのを知らないのか。


落下昆虫の量(サクラマス胃の内容物)

内容物底生昆虫:トビゲラ目(ヒゲナガクワトビゲラ、シマトビケラ属)幼虫に次いでカゲロウ目(ヒラタカゲロウ科、マダラカゲロウ科)幼虫。水温の低い自然渓流はヨコエビが多い。...積丹川

サクラマスの胃内容物(1994.6〜11月)は、陸生動物36%:水性動物64%。

〈完全うっ閉された林下は底生昆虫が少ない。〉

過度の被陰により付着藻類の光合成低下、それを摂取する水性昆虫も育たない。75%以上の被陰(相対照度25%)は藻類の生産性が低い(左藤1997)

サクラマスの繁殖には滝、淵、瀬、礫堆積が必要である(山崎ほか)。


〈河畔林の食料供給はヤナギ林、ケヤマハンノキ類の下が多い。〉

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