みちのくエコーステーション 木霊”こだま”の駅会報

会報木霊の駅

木霊”こだま”のお告げで発行 第 8 号

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21世紀念頭の挨拶 会長工藤悦郎

活動報告

事務局からのお知らせ

白神山登頂失敗 竹中 靖

田畑が消えていく 葛巻祐二

白神岳のいわれ 吉川 進

ノンべのための地圏講座 川村晃寛

オゾンの破壊 葛巻祐二

岩手地饅物語り 万澤安央

森は尽きないエネルギー5

編集後記 川村冬子


年頭のご挨拶  会長工藤悦郎

会員の皆さん、明けましておめでとうございます。

平成11年秋、南部にゆかりのある森林インストラクターの仲間の自己研鑽の集まりとして、宮古市重茂にて産声をあげた南部森林塾を母体として、自己研鑽に加え地域の要請も受けとめられる集団として仲間を募って20世紀の最終年1月に誕生したのが、みちのくエコーステイション(木霊の駅)でした。

 木霊の駅もやっと1年を経過しました。もともと自己研鑽をしながら地域の要請も受けとめることが趣旨でありましたし、自画自賛流にいえば会員はいろいろの分野のエキスパートの集団と言いたいのです。

 ちなみに、それぞれの特技をあげると、山菜料理ときのこ料理・海釣り川釣り・絵描き・植物・動物(両生類、爬虫類、昆虫、魚、海産生物、野鳥等)・陶芸・松茸、しどけ等の栽培等々実に多才な人達です。

 職業や経歴をあげれば、会社員・公務員・建設機械オペレーター・教師・ロッジ経営者・著述業・民宿経営・陶芸家・建設会社社長・看護婦・百貨店経営・製材所社長・気象予報士これまた多彩です。

 このような集団は、ほかにはないのではないのかなと思っております。

 よくぞ、このような人達が集ってくれたものと思っていますが、この裏には行動力と素晴らしい人柄の事務局長(中野雅幸)の献身的な努力があってのことと思います。

また、会員それぞれの特技を生かした活動の模様は、新聞にラジオにテレビに報道もされていますが、これは活動の中の一部で表に出ない日常の活動はもっともっと多いと認識しています。

 今年も健康に留意しながら存分のご活躍を期待し発展をお祈り申しあげます。

 会員の皆さんは、上述のように多才な特技と多彩な職業の人達です。今年は、ぜひこの多彩な顔ぶれが一堂に会して絆を深め親睦をはかるための集まりを企画したいものと考えております。予想だにしない話題が飛び交いさぞや盛り上がるだろうなと思っております。

 はからずも、20世紀から21世紀へ橋渡しができた"木霊の駅"です。会員みんなの手で育てて、いっそう会員の親睦と資質の向上をはかり、地域に会の存在をアピールすると共に地域に「頼りにされる」、「親しまれる」集団でありたいと思っております。このためにも、日頃自己研鑽に努め会員同志の情報交換などを行いながら、地域の要請にも対応していきたいものと思っております。

 昨年、当会の企画イベントに参加いただいた方々や応援して下さった数多くの方々に感謝すると共に、今年も宜しく応援をお願い申しあげ、新世紀の年頭に当たり決意を表明し挨拶といたします。

2001年元旦

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2000年 活動報告

・5月4〜5日 第1回交流会

ところ:久慈市、野田村、岩泉町

参加者:12名竹中夫妻、吉川、斎藤、田村一家4名、松尾、後藤、中野、菊池

・7月1〜2日 早池峰焼石連峰トレッキング

参加者:20名 

インストラクター:松尾、後藤、藤原、黒沢勝志(早池峰)、坂下和幸(焼石)

・8月8日 安比ブナの森サウンドウォッチング講師派遣(中野、後藤、山崎)

岩手県職員、県内教師15名参加

・10月20〜21日白神山地ふれあいトレッキング

参加者:33名(うち会員:工藤会長他12名)

・「木霊の駅」会報1〜7号発行中野雅幸(ホームページ作成も)、後藤純子、川村冬子

・クズの実採取、沙漠緑化事業へ送付

◎事務局からのお知らせ    

2001年 会費納入のお願い

新年がスタートし、今年分の会費を納めていただく時期となりました。

下記の要領でお支払いくださるようお願い申し上げます。

1.金 額    1人1年¥1000  ※中途加入の方も同額でお願いします。

2.納入方法    下記の@Aいずれかでお願いします。

@事務局長へ現金書留で郵送宛先: 

〒028-8201岩手県九戸郡野田村野田22-114-56中野雅幸

A郵便貯金ぱるる口座へ振込み

口座番号: 記号18360番号13132601

名  義: 木霊の駅 中野雅幸 ※郵便局では「ぱるるの口座」とご指定ください。

3.納入期限    2001年2月28日

4.ご注意:期限が過ぎても会費の納入がない場合は自動的に退会されたものとさせて頂きますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。


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 会員からのお便り

「登頂失敗」      竹中 靖(青森県下田町)

 去る平成12年10月20日、21日の世界遺産白神山地ふれあいトレッキング「黄葉と夕陽海岸温泉を楽しむ」に参加させてもらいました。浅学で早トチリの小生は、トレッキングなる言葉をも知らず、単なる山地間の簡単な移動だろうと甘く見たのが大きな間違いだったことを知らされたのは、集合地点の秋田県八森町「ぶなっこランド」であった。仙台方面からいらした方々は勿論、我が同輩の沼口、坪そして斎藤紀子各氏の服装をみて「オッタマゲ」てしまった。ステッキまで周到に用意し、これは正にクライミングの出立ちではないかとおぼしき様相であった。「しまった。」と思ったが今更帰れず「まあ、成り行きにまかせよう。」位に考えて、皆さんについて行った次第でした。ところがどっこい、二ツ森登山口に着いて、これ又びっくり仰天、な、なんとその二ツ森の頂上へと登るというのだ。

 小生普段からタバコを買いに300m先の店へ行くにも車を使う程の南部弁で「カラヤキ」、津軽弁では「カラポネヤキ?」のヌシなもので、大体小生の住んでいる三本木盆地では標高差があまりないので、散歩をするにしても、平坦な道をせいぜい往復2km25分位しか最近歩いたことがなかったので、「これは困ったことになった。最初から断念(give up)しよう。」と内心思ったのだが、それもかなわぬとすれば、行けるところまで登ってretireするしかないと覚悟を定めた。そうして約1/2位登ったところで引き返した。これ以上登って動けなくなると誰かの世話にならなければならないし、迷惑をかける、今ならマイペースで引き返せると決断した。

 「秋の夕日は釣瓶落し」といわれる如く、帰着時間の関係で夕陽は拝見できなかったが、みちのく温泉の黄金色の温泉に浸り、懇親会では初見の方々と酒を酌み交わし、親交を暖め大満足して就寝。藤原氏の配慮で我等老夫婦を一部屋に閉じ込めて頂き感謝至極!

 翌日一ツ森に向かって出発、登山口へ到着し一ツ森を望む。なんと昨日より急で高い山に見え、コースも昨日より2倍以上あると伺うと最初から戦意喪失、ギブアップと決め込み、全員が登り出してのち、マイペースで途中まで散策、皆の無事の帰りを待ったのでした。沼口、坪、柏崎、斎藤の各氏、それに我が老妻の健闘には驚きだ。小雨混じりの中をよくぞ登ったものだ。その「根性と精神」には頭が上がらぬ。

 さて、帰途は弘西林道(白神ライン)を通り、紅葉と黄葉、色とりどりの山容を眺め、白神山地の雄大さ、広大さに感激した。西目屋村の「アクアグリーンビレッジアンモン」で、沼口、坪氏と別れ「城ヶ倉での夕陽を見よう。」との柏崎成男氏の提案で城ヶ倉橋へ向かう。丁度落日寸前に間に合い、素晴らしい夕陽を望む。pm6:30分無事2日間の日程を終えて帰宅す。走行距離452km。

 柏崎氏の円熟した運転と、斎藤氏の看護婦らしい心の細やかさに接して、本当に楽しい旅だった。

 工藤会長、藤原勝志氏、参加された皆さんに心から感謝申し上げますと共に、皆々様の御健勝を御祈念致します。

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「岩手地饅いわてじまん物語」第一部  万澤 安央

 はじめに 無漂白南部小麦粉で作られた、ふっくらした中華饅頭のような皮に、野菜、山菜、海草、魚介類、肉類などの具を入れた、県内各地自慢の味、これがすなわち「岩手地饅」である。

「おやきって知ってる?」

 岩手県、それも北部のほうでこう聞くと「あー、すってる。おやきだばあれだべ、あんこが入ってて、平べったくこんがり焼いだの…」

「そうじゃなくてさ、長野おやきって知らない?」

「うーん、すらねーなー」

 こんな調子で、岩手のおやきとは、関東地方で言う「今川焼き」なのだと知ったのは、いまから約15年ぐらい前のことだった。でも、長野おやきはそれとは似ても似つかない食べ物なのである。

 東京でも、たぶん約20年ぐらい前から各地のうまいもの市などで市民権(?)を主張しはじめたような氣がするこの不思議な食べ物を知ったのは、ボクも30歳をすぎてからだったと思う。

 はじめて食べた長野おやきは、膨らし粉の入っていない小麦粉のしっとりした皮に、野沢菜の油いため、なすの味噌いため、にらキャベツといった具が入っていて、あくまでお菓子ではなく軽食、すなわち「こびり」なのであった。その後、長野おやきと一口に言っても皮に膨らし粉がはいったものもあり、具にも店ごとのスタイルがいろいろあって、まるでラーメンと一口には言えないような奥深さと味の差があることも、長野に行くたびに食べているうちにわかってきた。

 そこで氣づいたことは、長野と岩手には奇妙に共通する名物があって、たとえばりんご、温泉、スキー場、そば…、ん? それなのに岩手にはおやきがないぞ…。どっちかといえばこんなに岩手っぽい食べ物が岩手にないのは不思議でさえあった。

 そこで、冒頭の質問をことあるごとに発しているうちに、「あ、これは知らないだけで、岩手の人々はきっと長野おやきをうまいと感じるはず…」と思えてきたのだ。その思いは何年も胸のうちにしまっておいたが、岩手に引っ越したその年の冬から、いよいよ「長野おやき移植計画」は開始した。

 まず、地元、安代町を中心にして県北部の13町村を一人で回って「長野おやき大試食会」のお知らせをして回った。クルマで凍てつく峠をいくつも越えて沿岸部にいたるまですべての町村役場をおとずれて、生活改善グループや食の匠、あるいは直売所の関係者など、手当たり次第に呼び掛けた結果、平成十年二月の大試食会にはなんと250名の人々が集まった。長野県の三つのおやき製造会社から取り寄せた1350個のおやきは、テレビや新聞の取材の人々もふくめた、すべて参加者のお腹に収まった。

「これはおいしい!」「こりゃ口に合わないな…」と一口食べるたびに感想がとびかう大試食会であったが、そうじて「長野おやきはおいしい」との受止め方が大勢をしめたのは予想どおりでもあった。

「これは単に食べて感心するだけじゃなく、これを上回るおいしいものを作り出して新しい岩手名物にしましょう!」と、呼び掛けの段階から最終目的をかかげておいたから、なんとも言えない熱気のこもった大試食会だったのである。

 その熱がさめないうちにこんどは大試作会を二月末に開いた。こんどは80名の腕自慢の参加である。みんなで思い思いの具を持ち寄って、皮を作って包んでみようという趣向である。ところがいずれ劣らぬ腕自慢のはずが、当日の皮の出来はおせじにもほめられたものではなく、取材にきた新聞記者はそのとおりの印象をすっかり記事にしてくれたのであった。これもまた予想通りとはいえ、商品としての名物づくりは前途多難を思わせた。

 それから、雪が解けてみんな忙しくなり、夏が来て、秋の気配がはやくも忍び寄ってきたが、誰一人として「皮ができた」と言ってはこなかった。「じゃ、これはと思う皮ができたときは連絡下さい」と、言っておいたのに、みんなどうしちゃったんだろう?

 ちょうどそんなことを思いはじめたころ、盛岡地方振興局から「岩手おやきの出来はどうですか? 盛岡市肴町のアンテナショップで売りたいんですが…」と連絡が入ったのには参った。その日まで約1ヶ月しかなかったのである。

(次回に続く)

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 「南極における成層圏の気象とオゾンの破壊」   葛巻 祐二         

 冬は極点を中心に太陽光が当たらない極夜域が広がり、また極を中心とした渦状の大気の流れ(極夜渦)が発達し、周囲の大気領域との間の空気の交換が著しく制限される。このことによって、暖かい空気の流入が激減し、南極上空は放射冷却による気温低下の方が大きく、どんどん気温が下がる。

 成層圏(対流圏より高い層)の気温が−78℃以下に低下すると、気体として成層圏に存在している硝酸や水が結晶化し無数の氷晶からなる極成層圏雲を形成する。この極成層圏雲がオゾンホール形成に重要な働きをする。

 成層圏に存在する塩素の殆どは硝酸塩素(ClONO2)と塩化水素(HCI)であるが通常の状態では不活性でオゾンと反応しない。しかし一般的に気体のみの場合起きにくい化学反応が、固体または液体の表面を介して活性化して化学反応が進行する場合がある。

 オゾンホールの場合、極成層圏雲の氷晶表面を介して化学反応が進行する

   例    ClONO2+HCl  →  Cl2+HNO3   

   (不活性塩素である硝酸塩素と塩化水素が

互いに反応し塩素ガスを大気中に放出し、硝酸を氷晶内に取り込む)

 この化学反応の結果極成層圏に大量に発生したCl2は、太陽光によって容易に光分離しオゾンの破壊作用のある塩素原子となる。

  例 フロンによるオゾン層破壊の化学反応 

   紫外線によってフロンを構成している元素

のClが遊離すると

   Cl + O3 →  ClO + O2    

   ClO+ O   → Cl + O2    

このような化学反応を繰り返すことによって、オゾンが減り酸素分子が増える。ハロンに含まれる臭素原子(Br)も同様と考えられる

 しかしこの反応が活発になるためには、氷晶と太陽光が必要である。したがって春に南極に太陽が戻って成層圏がまだ暖まる前というタイミングが必要である。

 もちろん太陽光を必要としない化学反応によっても冬あるいは夜にも活発ではないがオゾンの破壊が行われている。

 南極のオゾンホール

 南極上空のオゾンホールは通常、南半球の春8月頃から現れ、9月から10月初めにかけ発達し、その後は次第に衰弱して夏11月末から12月に消滅する。

 1987年以降オゾン全量が1970年代平均の50%以下にまで減少するオゾンホールが毎年現れている。最近、北極でもオゾン減少が観測され始めている。

 もっともオゾン減少の激しい高度は12〜22kmの範囲であるが、ときには殆どオゾンのない層が現れることがある。

 重要なのは、南極や北極のオゾンを減少させる物質(フロンその他)が、その発生源から大気に放出され、大気の南北循環によって両極(南極・北極)上空に達するのに20〜30年かかっている事である。つまり、現在のオゾンホールは20〜30年前に先進国といわれる国々がフロンなどを大気中に放出した結果であり、途上国では現在もまだフロンを使っていると言われている。  

 そしてオゾンの減少は両極地方に限らず、中緯度でも減少が観測されるようになって来ており、紫外線防止対策が叫ばれるようになった。

※成層圏のオゾン層は、生体に有害な紫外線をはじめ、広く日射を吸収し、成層圏を暖めることにより現在の気候を維持する働きをしていると考えられている。

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新企画  なしてあそごさ山あるべ

〜のんべのための地圏講座〜   盛岡駅 川村晃寛    

地球を4圏に分けると例えば次のような分類ができます。

仕事 余暇 日常生活 災害 エネルギー 詩(俳句) 氏名
気圏 気象予報士、パイロット、航空自衛隊 ハング、パラグライダー、凧上げ、天体観測 時候の挨拶、洗濯 干ばつ、フェーン、やませ 風力、太陽光 風、月 嵐、薫子
水圏 水産業、潜水夫、海上自衛隊 水泳、ヨット、カヌー、釣り、サーフィン、ボート、温泉 炊事、風呂 津波、洪水、大雪 水力、波力、潮汐力 洋、洋子
人間界以外の生物圏 農業、林業、獣医、バイオ産業 グルメ、ペット、花見凡才、森林浴、釣り 食料、酒 山火事、食害、熊蛇蜂 木炭、バイオマス、化石燃料 花、鳥 龍、葉子
地圏 鉱夫、地質屋、陸上自衛隊 スキー、登山、ケイビング、野営 野良仕事、排泄 火山、地震、地滑り 化石燃料、地熱、原子力 山(月) 岳、富士子

 いやーこうやってみると地圏のしめる守備範囲って広いですよね。人はどこから生まれてくるかは別にして、地面の上で暮らして皆土に帰るのですから当たり前といえば当たり前ですが(フィクションでは木の上や海の上で一生を過ごす者もいますが)。

 ということで地圏からのアプローチも必要かなと筆を執ってみました。題名中の「山」は地圏の象徴であります。(因みに息子の名前は「岳」です。)この講座(!?)では、次のような地圏に関する様々な疑問について考えてみたいと思います。「岩手山は噴火するのか」「早池峰の植物相が特異なのは」「東北大震災は起こるのか」「金が今でも採れる場所は」「人跡未踏の地が東北に残されているか」「山の酒が何故おいしいのか」・・・etc.

 今回は「山の酒のおいしさ」について考えてみたいと思います。

 野営地で飲む酒のうまさは誰もが異存のないところでしょうが、これを超科学的に解明してみます。

 人は同僚と街に飲みに行くとき、会社や仕事の悪口を肴にします。「そんなことないよ」そうですかぁ?多かれ少なかれ何かしらの憤懣を晴らしているはずですよ。ところが山ではそれが全く無くなり、純粋で新鮮な酔いが不意に襲います。これを「木霊への同化作用」と呼びたい。街で飲むとき同化する対象はねぇーちゃんであり、見飽きた同僚でありいつも変わらぬ話題である。山ではそのような日常的な対象が見当たらず、雷が落ちるように廻りの木々に、流れる沢水に、くすぶる炎に同化の対象が向かうわけです。この非日常的な同化作用が酒のうまさと感ずるわけです。すなわち、山での酒のうまさの感じ方は、街で飲む酒量と比例して高くなります。その他にも理由は数多くありますが、割愛します。次回からはもうちょっと科学的にやりたいと思います。   (父ちゃん、たのんまっせー。FK)

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連 載 白神岳(白神山)の名称由来の考察 <その2>    吉川 進

 日本の名山に数えられるものに富士山、月山とともに、加賀の信仰の山・白山(ハクサンシャクナゲ、ハクサンイチゲ、ハクサンシャジン等の植物の宝庫としても有名)がある。(日本三名山)ここは、石川県南部で、絹の産地でもある。小生今年(2000年7月28日〜30日)白山に登ることが出来た。クロユリの大群落には驚いた。

 その昔、津軽十三港が日本有数の良港として栄えた頃、各地との交易ルートは海上が中心で、津軽と加賀も太いレールで繋がっていた。

 青森特産、青森ヒバが異境地・石川に運ばれ、その名を「アテ」として人工林・アテ林業を繁栄させてきた。

 そのルーツは青森の津軽か南部(下北)か興味のあるところだが、いずれにせよ、青森ヒバが石川に運ばれて育てられたのは事実のようだ。日本列島・本州日本海側をみると自然の摂理に従い、最北端がヒバ、そしてブナ、秋田に入って三大美林のひとつ秋田スギという具合に、樹々達は住み分けを知っている。その最北端の青森ヒバが遠くの地石川に住みついたのは、自然だけの成せる技ではなく、人間の知恵との合作と考えられる。

 牧野富太郎が、青森ヒバをアスナロの北方変種としてヒノキアスナロと命名。その後の研究によって、石川の「アテ」がヒノキアスナロであることも明らかにされた。逆に青森の養蚕のルーツが石川(?)ということも考えられない訳ではない。養蚕はいずれにせよ中部方面との交易の中から伝わったものだろう。

 これらの海上交易から津軽を考えて見ると、北上してきた交易船が津軽十三港に入る前に目につくのが白神岳であっただろう。たぶんそれは、航海の目標ともなったであろうし、夏近くまで白い雪をかぶったこの山に何となく愛着を持ったことが考えられる。

 そこで、ひとつの仮説も生まれてくる。

 加賀の「白山」を津軽に見たてたことから、津軽の白山、いわゆる「白神」に発展していったのではないかという説。これも興味ある推察かと思われる。

 だが少し引っかかるのは、津軽の岩木山の存在がある。白神岳を見過ごした交易船が十三港に入って来た時、津軽富士と言われる岩木山が見事な容姿を現わし、頂上に雪の帽子をかぶった姿は、加賀の名峰「白山」の分身、それこそ「白神」の名に値するものであったと考えられる。その雄姿から考えてみて「白神岳」よりは「岩木山」に軍配を上げるだろう。だから津軽の「白山」となるのだったら、現在の白神岳より岩木山の方が考えられる。なぜそうならなかったのか(?)。岩木山はすでにその時、津軽の人達が尊敬し親しんでいるりっぱな名称があったと思われる。同時に、白神岳にもすでにそのような名称があったのではないだろうか。そう考える方が自然で無理がないように思われてならない。残念ながらこの仮説もくずれそうである。

 オシラサマと白神岳の名称は深く関連を持っているものと思われるが、オシラサマや加賀の白山は白神岳の名称由来のルーツではなく、別なところにルーツがあり、その後、それらが便乗したと考えられないだろうか。       (次号につづく)

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「今言いたい事」   葛巻祐二(岩手県久慈市)

 最近、「あってはならない事」「信じられない事」「今後絶対にこんな事が起こらないようにします」「全く訳のわからない事」、こう言う言葉を毎日見たり聞いたりするようになりました。これは戦後自由と民主主義教育の間違い(自由を強調しすぎた)に根ざしているように思われ、正常化のためには不正常になったと同じ時間かかるのではないだろうか。

 それに、地球の大気・地上・地下・海底と地球の汚染が急速度で進んでいます。「先のことより今が良ければ良い」といった物質文明の付けが返ってきただけの事ではないだろうか。

 高度成長の真っ最中のころ、昭和40年代に湯川英樹博士が「新幹線で浮いた時間は働くのではなく、趣味や見聞に使わなければならない」またある科学者は「原始にもどれ」と言いましたが、両言とも本気で考える事をせずみんなで我先に突っ走ってきました。

 今からでも遅くはない、みんなで本気になって考えてみよう、そして真の科学者の言葉を聞き、自然状態で地球上にない物質を作ったら、その終末処理方法を確立してから実用化する、これを守らなかったら地球環境汚染がどんどん進む事を肝に銘ずべきである。

 もう一つ、減反や農地の宅地化が進んでいますが、何時までもアメリカやその他の大陸で食料を供給できるとは考えられない、何時か(次世代か次次世代か)温暖化から砂漠化の時期がやってくると思っている者としては、せっかく開墾した日本の田畑が消えていくのを見ていて「消すのではなく休ませなさい」と叫びたくなります。

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森は尽きないエネルギー 5

世界で一番大きな生物は象でもクジラでもない。それはキノコ、正確にはキノコ菌。何キロ平方メートルもの大きなものが有るそうだ。それが生えているのは熱帯の森林。宇宙から見ると森林も一つの生物に違いない。その森も人工衛星ランドサットで調べたら半分くらいに減ったらしい。海もだ。海水は減っていないが汚染が進んで狭くなったと同じだ。地球の圧倒的生物が必要とする酸素は、ほとんど森と海の植物性の生物から供給されている。その命の源が人間の行いによって減り続けている事は、我々人類自らが滅亡に向って進んでいる事になる、と著名な学者が言う。

森林は再生の効くエネルギー。石油もウランも有限、あと40〜100年?世界を視野に入れた環境活動が必要な二十一世紀だ。

編集後記

別に音速を超えるヒコーキに乗ってる訳じゃないんだから衝撃も何もなくて当たり前だけど、何のゆれも感じずに世紀越えをしてしまったなあ、というのが年頭の率直な感想でした(地震じゃないんだよね)。今年はまたぞろ山野に出て歩きたいと思っています。会長のおっしゃるように、自己研鑽を積まねば、と思います。

インストラクター受験のために蓄えた知識の貯金も目減りの激しい昨今、子供かついで山サ行ぐかー!

皆さんからの記事、毎号内容の濃いものをお寄せいただいて感謝しております。ところで、より多くの方の声を聞きたいゾ、ということでN大編集長と相談しまして、"テレフォン・ショッキング"みたいに「次の人ご指名式」のはがきチェーンメールを始めたいと思います。で、最初はダレなんだーと考えたら、アレー誰にしようと思ったんでしたっけ、編集長・・・。ともあれ、次号の原稿集めの折にどなたかに白羽の矢が立つことになりますので、心身お清めの上、木霊のお告げをお受け下さいませ・・・(あっ今日のTVロードショーは「もののけ姫」だわー!)。(FK)

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