会報木霊の駅

〜 木霊のお告げで発行 2000.6 第 3 号 〜

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「メカブの変身」 

内田 明

 東京育ちの私が山田町で下宿して、覚えた味がメカブとホヤだ。ホヤはまずいとおもったが、メカブのうまさには言葉が出なかった。

 三月中旬、早朝の浜は養殖ワカメの収穫でごった返す。ワカメを船から上げる人。葉先や茎を切り取る人。大釜で茹でる人。家族・親戚・近所の人が忙しく立ち働く。

 ワカメの茎の下方、根の直上にできるひだがメカブ(布株)だ。ここで遊走子がつくられる。成熟した遊走子は初夏の頃メカブを飛び出し、岩場にくっついて配偶体となり、夏を越す。秋になると配偶体に配偶子が熟し、雄の配偶子と雌の配偶子が受精して芽を伸ばし、春には立派なワカメになる。面倒くさい話だが、それがワカメの生き方だ。

 メカブはぬるぬるしていて、細かく切るのに苦労する。ときどき指を切る。陰干ししてからきざむといいんだそうだ。早く教えてくれよ。

 きざんだ茶色のメカブを湯に入れると、鮮やかな緑色に変身する。器に入れてかき混ぜると、トロトロになる。醤油をかけ、ご飯にのせ、かっこむ。三陸の海岸に暮らす歓びを、思う存分に味わうのだ。

 天然ワカメのメカブはめったに食べられない。出回るのは養殖物だ。そのワカメ養殖が少しずつ衰退している。害虫にやられたり、作業がきつかったり、輸入物に押されたりするからだ。

 ワカメの養殖は、海の栄養(窒素やリン酸)の直接利用であり、汚染の無い素晴らしい産業なのだ。ワカメの栄養も、言うまでもなく素晴らしい。三陸のワカメ養殖を、末永く続けて貰いたい。

〜 会報2合の内田明さんの記事について、読者の方からこんな質問をお寄せいただきました。 〜

八戸市 斉藤紀子さん

Q.「イサダとアニサキスの記事は興味深く読ませていただきました。アニサキスが恐くて大好きなイカ刺も食べられずにいるので、寄生虫がいるかどうか見分ける方法を教えて下さい。」

A.イカ刺のアニサキスを見つける方法について、ご質問にお答えします。

  実は私、アニサキスを見たことが無く、見たいとも思っておりません。

  「笑うカイチュウ」の藤田紘一郎先生はテレビで、サバの内臓でうごめくアニサキスを見せていました。気持ち悪かった。

   虫が腸に到れば誤診・開腹手術の場合もあるが、刺身が原因と分かれば、鎮痛剤処方のみで1週間で治ると本に書かれています。

   イカの身に居れば、とぐろを巻いている姿が透けて見えるので、そこを取り除けばよいそうです。

   それでもあたったら、ご免なさい。

(内田 明)


「ドライブの楽しみ」

 久慈農林高校 竹内 基

 八戸に転居して3ヶ月ばかり。毎日約1時間かけて久慈まで通う日々です。

 この1時間のドライブは、2月まではスリルとサスペンスの連続でした。なにせ山道(八戸 > 階上 >南郷 > 軽米 > 大野 > 久慈)なので、凍結・圧雪の連続で、道々事故を目撃することが何度かありました。

 しかし、アスファルト路面が出てからは、本当に快適な通勤になりました。先日も、夏井の交差点付近にフクジュソウの群落を目にして、春を実感しました。この群落、それほど大きくはありませんが、なかなか見事なものです。大野にも山緑にちらほらと咲いていますが、かたまって咲いているのはここが一番かな。それにしても、このフクジュソウは自然なのか、それとも誰か好きな人が意図的に増やしたものかちょっと悩みます。

 ともあれ、これからが早春の花々(スプリングエフェメラル)が次々に咲いてくるのか楽しみです。道々にどんな発見があるのか、毎日楽しみに通勤しています。

「ちぢまぐさくば咲いたが、ばっぎゃいば生いだが。」

 苫屋(とまや) 坂本久美子

 春一番が雪の布団をめくる頃、陽当たりの良い所にベルベッドのような花弁を開く、福寿草。野田の山里辺りでは”ちぢまぐさく”という名で親しまれている。土から一番先に顔を出すから、”ちぢまぐさく”「土から一番に咲く」がナマッタものだ。アイヌ語からきている”ばっぎゃい”は苦みが強いので、この辺りでは食用にされていなかったが、子供のままごとには欠かせないものだった。福寿草と違って、いかにも弱々しい薄緑色の葉に包まれた、フキノトウ。独自の苦みゆえに、小さな命を守れたかも知れない。ところがその苦みが冬の間、緑黄色野菜不足で体に溜まった毒を流してくれるというのだから、ままごとだけで納めておけない。頭を出したばかりの若芽を小麦粉にまぶし、しっかり泡立て卵白に包んでサッと揚げる。ビールのつまみには最高だ。この天ぷらは天つゆだけでなく、塩をつけて食べてほしい。ホロリとした苦味ががなんともいえないだけでなく、頼りなかった外葉もしっかりと色付き、まさに春一番の山菜である。

 家事と仕事で忙しいお母さん、たまには家族で山歩きをしながら、今夜の食材を調達してみては・・・?市場では手に入らない、新鮮な空気と無農薬の食材が待ってるよ。仕事、仕事のお父さんは職場でのストレス解消、晩酌の肴探しと一石二鳥。

 昔は、”山のものは家の横に移すな”といって、毒のある草花を庭に植えるのを避けていたという。子供にかまっていられなかった先人達の知恵である。

 (注)福寿草は毒草です。