会報木霊の駅

木霊”こだま”のお告げで発行 第 12 号

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スノーシューハイク。万澤安央 空飛ぶ樹木。高橋 理
お告げの解答。葛巻佑二
お告げの質問。竹中啓子
虫さんのお話。後藤純子
もし地球の歴史が1年だったら
川村晃寛
里山林の活用
吉村文彦
森は尽きないエネルギー9
中野雅幸
編集後記とナダレに注意
川村冬子
         
 まだまだ寒さは続きますが、日が長くなって嬉しいですね。岩手県安代町の会員・万澤安央さんから野外活動のご案内が届いています。

「平庭の春、先取りしましょう!」
紙面ではご無沙汰してました万澤です。木霊の駅会員のみなさんに楽しい春の企画のお知らせです。
3年前から私が安比高原周辺で開催してきましたスノーシュー(西洋かんじき)ハイクを、岩手県山形村の「エコパーク平庭高原(仮称)」周知事業として、この春から(以後毎年)平庭開発促進協議会主催で行います。

このイベントの目的は、平庭の美しい冬の自然を鑑賞して楽しんでいただくと同時に、平成18年開業予定の「エコパーク平庭高原」の基本的精神を、その完成前からできるだけ多くの方々に支持していただこうというもので、まさに木霊の駅会員のみなさんのために企画したようなイベントです。

このイベントにかける山形村の意気込みも大変なもので、世界のトップブランドであるアメリカのアトラス社製スノーシュー(コピー商品多数あれど、特許である機能の高さはマネできません)をなんと30台も購入しました。したがってそれを皆様が当日初めて履くことになるわけです。
スノーシューはメーカーによる性能差が大きいので、最高のスノーシューを揃えてくれた山形村の嵯峨さんの英断にまずは拍手を送りたいと思います。

ガイドは僭越ながら私、万澤がつとめさせて頂きますが、開催当日は私が知っている以外の木や鳥や動植物名を質問して困らせたりしない(??)ことを条件に、ぜひぜひご参加下さい。では、当日の平庭山荘で皆様の笑顔をお待ちしています。 万澤安央より
  スノーシュー・ハイク
一回目・平成14年3月17日(日)
二回目・3月21日(春分の日)
午前10時〜午後0時半・平庭高原一帯
スノーシューで、すがすがしい雪の上を歩きながら
すぐそこにきている春の気配を見つけましょう!

内 容:
ガイドの引率により平庭高原周辺の山野を歩き、動物の足跡さがし・雪の風紋観察・つぼみの発見・宿り木花観察・雪の結晶観察などを楽しみます。
(荒天の場合は屋内メニュー「自然不思議談義」に切り替えます)
集合場所:山形村平庭「平庭山荘」ロビーにAM9時45分集合
募集人員:15名(子供は8歳以上から参加可能)
限定特別モニター参加料金:お一人様3千円(ガイド料・スノーシューレンタル料・平庭山荘での昼食含む)
主催:平庭開発促進協議会
実施:平庭高原ガイドクラブ
お問い合わせ・申し込み先:山形村役場ふるさと振興課 嵯峨さん 

TEL 0194-72-2111


      空飛ぶ樹木
高橋 理(造園業 樹木医)

 皆さんは、飛行石を抱えて空を飛ぶ大きな樹木を知っているだろうか。そお、パズーとラナ?、ナウシカ??、チヒロ???、名前は忘れてしまったけれど、あの少年少女が主人公の「天空の城ラピュタ」である。
 思い出してほしいのは、少年少女の名前ではなく、あのラピュタがバラバラと崩れていった後に残った巨大な樹木には、大きな根っこがあったことだ。当たり前のことだけど、実際の現場では、ほとんどの人が地下部の根には注意を向けないのだ。
 樹勢の衰退の原因には、樹齢や病気、虫害、気象害など色々あるが、ほとんどが地下部の土壌条件の悪化に伴う根系の衰退や根系の切断が原因であると言ってよい。土壌条件や樹種によって異なるが、一般的に根系は、枝の広がり(樹冠と言う)の2倍は伸長すると言われる。特に樹冠下の根系は密度が高く、樹勢に大きな影響を与える。ところが、幹を切らないでも、この根を道路工事や水道管、電気線埋設工事などによって切断している場合が多いのである。
 地上部の枝葉と地下部の根の量は、常にバランスがとれているため、根を切ればそれに対応した
量の枝葉も枯れることになる。枯れの症状は一般的に半年後当たりから徐々に現れ、私の経験では、5年間ほど続いた場合もあった。こういった場合の処置としては、根の切断部からの腐れを防ぐことと、新たな根を早く伸長させることで新たな枝葉を生長させるために土壌改良などの方法をとる。しかし、あくまで2次的な被害防止と新しい生長を促進させる処置であって、枯れる部分は枯れてしまうのだ。
 街路樹の植桝をみると1uにもみたない場合が多いが、よくこんな場所で生きているものだといつも感心してしまう。歩道の下などに必死に根を伸長させているのであろう。街路樹も良いが、根のことを考えれば鎮守の森の様に、広がりを持った林を街中に育てるべきだと思う。生物多様性の保全にも役立つだろう。
 これからは枝葉を広げた樹木を見たら、同じように根も広がっていることを想像してみてください。そして、同じ工事でも、樹木へのストレスを少なくする方法を検討できるはずなので、工事をする前に相談してほしいと思っています。
(★彼女の名はシータ。本名はルシータ・トエル・ウル・ラピュタ「ラピュタの真の王」。注:ワタシは宮崎オタクとゆーわけではありません。FK)

   お告げのハガキ 拡大号

今回は2通お便りを頂いていますので、一挙に掲載いたします。
まずその4、前号・橋上智さんのお便りへ、久慈市 葛巻祐二さんからお返事です。

皆さんこんにちは
ホームページ「久慈ウェザーサービス」を開いている葛巻祐二です。
 昨年は終わってみたら和佐羅比山・八幡平・岩手山・遠島山と四度の登山をしていました。仲間は60歳以上の町内の有志です。今年は早池峰に挑戦しようとしています。何時もの事なのですが、人一倍時間を掛けて無理せず、行けるところまで行こうをモットーにしています。
 さて、お告げのおはがきをいただいて大分経ちますが、遅くなって済みません。
 久慈の橋上さんから「昨秋は他の茸はそれなりに出たようだが、マツタケだけが不作だった。天候と茸について教えて!」と言う事でしたが、わたしも昨年初めてセミプロの方に「マツタケ狩り」に連れていってもらいました。と言う事で茸のことはぜんぜん分かりません。
 天候のことを言いますと、9月・10月の温度は大体平年並でしたが、大雨が9月11日・12日と10月1日・2日と短時間の強雨を伴ってありました。その他の日は晴れの日が多く、雨もほとんど降らなかった。「大雨があると菌が流されてきのこの発生に良くない」と聞いた事があります。参考にならなかったと思いますが私には全く分かりません。ちなみにわたしのマツタケ狩りはセミプロの方の一本だけでした。
 久慈の今年の冬は、12月が記録的な低温(平均気温)と積雪でした、1月の気温は平年より高目に経過していますが、二度の大雪や大雨があったりして寒暖の差が大きくなっています。2月は平年並に経過しそうで、春3月は平年より暖かいと予報が出ています。詳しくは私のHPを御覧下さい・・・・。

(http://www4.ocn.ne.jp/~yk0830/)

無責任なつぶやき
 野生動物や野鳥の餌付けや必要以上の保護を見聞きしますが、その結果個体が増えすぎて今度は邪魔になって間引きをしたり、人間の身勝手や独善以外の何物でもなかろうと思う事がある。
 自分で餌を取れなくなりはしないか、ある種が増えすぎて自然のバランス・食物連鎖を壊していないか?今後壊す恐れはないか、保護したり餌付けをしたりが結果的に悲劇に終わらねば良いが・・・・。餌付けや必要以上の保護をやめて、その代わり彼らの棲家をそっとしておき、それで滅びるものは仕方がない。人間を間引きする事は出来ないんだから、ちょっと過激かもしれませんが色々思い巡らせている今日この頃です。
橋上 智さんへ
杉の木の枝張りのし方と広葉樹(実のなる)の苗を手に入れる方法を教えてください。又森林組合はどういう団体なのかお知らせ下さい。
◎高山 賢一さんへ
久慈川の淡水魚図鑑はどこの本屋さんでも手に入りますか。    葛巻祐二拝

その5、下田町竹中啓子さんからお葉書
十月の上旬、近くの山へ栗拾いに行った時、枯れ草の下に、百足らしき虫が茶碗を伏せた位の大きさに群を作っておりました。蚯蚓(みみず)ならばそういう集団で群がっていたのを見たことがありましたが、二カ所で見つけて飛び上がる程びっくりしました。越冬の為でしょうか?虫博士おしえて下さい。後藤純子さまへ

次のご指名は一気に3人。橋上智さん、高山賢一さん、後藤純子さん、ハガキに質問への答えとコメント、そして次の人のご指名を忘れずにお書きのうえ、編集人までお送りください。お待ちしています!

虫さんのおはなし
衣類を食べる虫    後藤純子
 季節の変わり目、押入の奥深くとっておいた服を久々に出してみたら、虫に穴をあけられていた・・・そんな経験はありませんか?衣類の害虫は何種類もいますが、私の周辺で見る限り、大抵はヒメマルカツオブシムシなど小型の甲虫が犯人のようです。この仲間は、成虫は体長2〜3mmの丸い甲虫で、幼虫は毛むくじゃらのたわしのような姿をしています。幼虫の栄養源は、乾燥した動物性タンパク質です。名前の由来となる鰹節はもちろん、動物の毛や虫の死骸などが餌になります。木綿や化繊なら大丈夫ですが、毛皮のコートやウール100%のセーターなどは要注意です。高い服ほど虫に狙われると思いましょう。対策は、何より防虫剤を切らさずに衣類を保管することでしょう。
 それでも、この虫は容易に家から出ていきません。部屋の隅にたまったわたぼこりや髪の毛、切った爪なども、この虫の餌になるのです。掃除もきちんとやっておきましょう。 かくいう私もやられました。台所のすみに転がっていた絵筆が、いつの間にか毛先が切れてぼさぼさに・・・。ああ、そういえば筆は、豚や馬の毛で作られたんだっけ。え、いつまでもそんなところに置かないで、さっさと片づけろって?ごもっとも。

         もし地球の歴史が1年だったら
連載 なしてあそごさ山あるべ〜のんべのための地圏講座〜
盛岡駅 川村晃寛
 地質年代の話を見聞きするとき、その大きなタイムスケールの為、思考停止に陥ることがよくあります。「この化石は5千万年前のものです」???
「東京ドーム何個分?」的な比喩を聞いたことがまずありません。そこで、地球が出来たという46億年前を1月1日とし現在までをカレンダーにしてみました。
 生物の誕生は意外と早く3月5日になっています。この原核生物と呼ばれる生物は、細菌やラン藻のような極めて原始的なもので現在もオーストラリアでこの日からほとんど進化していないストロマトライトという生物が繁殖しています。その後、ゾウリムシのような単細胞生物が6月20日頃誕生し、いよいよ多細胞生物の爆発的進化の季節が11月中旬頃からやってきます。
 酸素が飽和量に達し、オゾン層が出来上がると生物は紫外線が激減した陸上に大挙して押し寄せます。12月に入ると巨大シダの森林が繁栄し、現在に近い状態の食物連鎖の輪が出来上がります。
 クリスマスイヴの頃に繁栄する恐竜は、メキシコ湾に落ちた巨大隕石のせいで絶滅します。
 ところで、「古生代」などの地質時代区分は、実は生物の種代交替が定義の元になっていることを知っていますか?古生代は「カンブリアの大爆発」と言われる種の多様化・大型化、個体数の激増の瞬間がその始まりの定義となっています。同じように中生代と新生代の始まりはそれまで繁栄していた種の大量絶滅とそれに次ぐ爬虫類やほ乳類の爆発的進化の瞬間が定義となっています。
 このような生物の進化と地層に残る歴史(化石)を組み合わせて考えることは現在ではごく当たり前のこととして認識できますが、ダーウインの進化論なくしては成り立たない概念でした。ただし進化論の他に必要な基本概念がもう一つあります。それは、チャールズライエルの唱えた「過去の地質現象は、現在も地球上で起こっている諸現象と同じ過程で形成された」という概念で、「斉一説(せいいつせつ)」と呼ばれています。つまり「現在は過去を解く鍵」だということです。このような考え方が19世紀当時、如何に画期的であったか想像できますか?
 話がだいぶ脇道にそれました。人間も含めた現在の生物が現在と同じ環境の下、生長できるようになったのは新年の僅か1分前です(縄文時代)。その直後古代文明が隆盛しましたが、すぐに森林を枯渇させ10数秒で衰退してしまいます。現代文明の萌芽が18世紀末の産業革命であるとすれば、これは1秒半前の出来事でした。この1秒半の環境激変は、地質時代区分を変える程の出来事かもしれません。あした新年を迎えますが、我々は除夜の鐘を最後まで聴くことが出来るでしょうか?

地質時代区分 生物界の出来事 地圏の出来事 実年代 換算日時
冥王代     地球の誕生 46 億年前 1月1日 0時00分  
      海洋の誕生 40   〃 2月17日    
太古代   生物(原核細胞)の誕生   38   〃 3月5日    
原生代   真核細胞の誕生 酸素の発生 24.5   〃 6月20日    
顕生代 古生代 多細胞生物の爆発的増加   5.7   〃 11月16日    
    陸上植物の誕生 オゾン層の生成 5   〃 11月22日    
    北東北最古の化石   4.4   〃 11月27日    
    巨大シダ森林の形成   3   〃 12月8日    
  中生代 ほ乳類の誕生/珪藻の大量死 石油の起源 2.5   〃 12月12日    
    恐竜の大繁栄   1   〃 12月24日    
  新生代 恐竜の絶滅/ほ乳類の大進化 巨大隕石の衝突 6500 万年前 12月26日    
    霊長類の誕生   5000   〃 12月28日 0時46分  
    類人猿の誕生   500   〃 12月31日 14時28分  
    人類の誕生   200   〃 12月31日 20時11分  
    森林の生長と人類の定住化 最終氷河期の終焉 1   〃 12月31日 23時58分 51秒
    古代文明の誕生   7000 年前 12月31日 23時59分 12秒
    縄文杉の誕生   3000 12月31日 23時59分 39秒
    石油の発見/産業革命   200 12月31日 23時59分 58.6秒
    人間の一生   80 12月31日 23時59分 59.5秒
    木霊の駅の活動   3 12月31日 23時59分 59.98秒


特別寄稿 里山林を活用することは自然を保全することである 吉村 文彦
(連載その2 前号より続く)

里山林という自然を保全するとは?
1)里山林(アカマツ林)の登場
 昔、人は生活するために炭や薪や柴などエネルギー源を集落近辺の原生林で調達した。住居や神社仏閣を造るためにも膨大な量の材木を伐採している。生活用具の材料の採取も原生林であった。食糧生産には農地に肥料を施すが、落葉や刈敷も当然のことながら集落に近い林から得ていた。このような原生林の活用が人口増と共に激しさを増し原生林の再生能を超えた。終いには原生林という生態系から新しい里山林という生態系を創出するのである。いつ頃からアカマツ林が、今は全国的にはマツノザイセンチュウの害で減少しているが、日本列島にこれほどの密度で見られたのであろうか。花粉分析によると、アカマツ林は縄文時代には瀬戸内沿岸にのみ存在していた(安田喜憲 1998 森と文明の物語 ちくま新書)。本州、四国、九州でアカマツ林が増えた時期は500年頃からである(塚田松雄 1974 花粉は語る 岩波新書)がその急増期は鎌倉時代以降(1200年)で、東北北部へのアカマツ林の拡大は江戸時代後半から明治の始め以降に見られる(安田喜憲 1980 環境考古学事始 NHKブックス)。

2)里山林の崩壊
 1955年に始まる高度経済成長によって私達の生活は「豊かに」も「便利に」もなった。家庭用燃料が薪炭から化石系に変化し炭の生産量がピークを過ぎた年も1955年であるが、これは里山林の活用の低下を招いた。その後、主たる産業が第3次産業に移行するにつれ里山林の放置がますます進行し、アカマツ林の構成樹種に変化が現れアカマツ優先が崩れた。うっそうと植物が茂り、緑豊かに見えるが植物の多様な生育環境が奪われ、多くの植物が姿を消しつつある。マツタケもその仲間の一つである。生物の多様性の価値を否定する人はいないが、「アカマツ林が極相林に変わってもいいじゃないか!」とか「樹を伐らなければ緑豊かになるのだから!」と単純に考える人が多く、「再び、人による森林の破壊が進行していて、里山林の植物が絶え、そのために植物を訪れる昆虫が絶え、それを餌とする鳥類に影響が及び、やがて自然はどうなるのか」と考える人は少ない。このことは、原生林の人為的な攪乱で登場し、しかも1500年という長期に渡って人が維持し続けた、だからこそ、里山林という生態系に適応した様々な生物を、たった45年間で葬り去ろうとすることであり、生物の多様性が保証されるべき自然を否定する行為ではないか。
 里山林を保全するということは、その成立過程を見るならば、林を活用すること以外に道はないのではないか。

里山林の保全には林業活動が必要
1)林業技術が無くなる
 森林保護や環境保全が声高に叫ばれているが、20世紀型の経済効率第一で解決しようとすると取り残されるように思えてならないし、また自然保護運動にも色々あって森林の健全な成長に障害となる運動もある。持続的利用とか持続的発展とか生物の多様性の維持とか言葉だけが氾濫している。どうしたら里山林を持続的に利用していけるのか、どこにもその提案がない。保護林を作ったり保護地域を作っても里山林の生物の多様性は守れない。森林は誰が守るのか、その資金はどうするのか未だに国民的合意はない。里山林という環境は私達の生活に大変大きな重要な機能を持っていることは明らかである。里山林という自然は、持ち主の物ではあるけれど、同時に持ち主の物ではない。私達の生活に密接な関係のある自然である。社会の共通財産であると考えることができる。道路が崩れたら補修するように里山林も補修するのである。営林署の林業技術者はその統廃合やらリストラでなくなってしまった。各地域の森林組合が抱えている林業技術者も高齢化し10年も経つと林業技術が廃れる恐れが出ている。森林ボランティアで国土の70%近くある森林を守れると本気で考えている人はいるまい。当然のことである。

2)再生可能な資源としての森林を活用
 新しい林業を起こすしかないのではないか。森林は、建築用材の生産主体の場から持続可能な資源の生産の場であると位置づけを変える必要がある。里山林を保全するためにはその資源を活用する以外に方法はない。水を守るために神奈川県や福岡県や愛知県豊田市(高知県も)では水道代の一部を流域の森林保全へ還元している。長野県では森林育成に公的資金を投入するというように地方自治体独自の動きも出てきた。里山林の持続的活用を進め、林業を活性化するには森林の新しい利用法を作り出す必要がある。未だ課題のある技術もあるが少し挙げてみよう。

@里山林を手入れして健全に維持し、アカマツ林でマツタケを栽培、ミズナラ林でホンシメジを栽培、カラマツ林でハナイグチやカラマツベニハナイグチなど食用きのこを栽培する。
A木炭の新機能に注目した利用法の拡大
Bペレットやチップを利用した暖房システムを導入
C粗朶沈床法や木工沈床法など伝統的な河川改修法や法面づくりの復活
D木質発電(コジェネレーション=発電と熱発生)による地域分散型の発電システムの導入
E里山林(人工林)の手入れ時に発生する材や落葉落枝や腐植質、家庭や事業所から出る生ゴミと畜産廃棄物の糞尿を混合、破砕スラリー化し嫌気的に発酵、メタンガスを発生させる。メタンを触媒法で水素に変換し水素電池(コジェネ)の原料にする。残渣は有機堆肥にする。
F植物資源のセルロース(材)を強力に分解するセルラーゼを産生するキノコを探索(現在のものは小動物等の分解物を分解している)。それを利用してグルコースを産生。また、セルロースやリグニンを超臨界法で分解、グルコースを作る。メタノールやエタノールを生産する。                (おわり)

吉村 文彦(よしむら ふみひこ)さん
1940年京都府生まれ。京都大学農学博士。
1990年に京都大学を退官、岩手県岩泉まつたけ研究所所長として着任。
今年3月岩泉での10年間の研究をまとめた「岩泉式まつたけ山のつくり方」を著述。
中野事務局長がまつたけ研究所を訪問した際、投稿をいただきました。

森は尽きないエネルギー パート9
アサとカヤとヨシと言えば
 カヤぶき屋根は垂木(たるき・竹や木材等を組む)の上にカヤ(すすき)アシ(よし)アサ(麻)を敷く。そのほか米ワラを使っている地方もある。
 アシは"悪し"とも書くため"ヨシ(良し)"と呼ぶらしい。その芯は中空、水の中に生えるためだろう。その割に強く、束ねて船になるらしい。カヤは似ているがスポンジ状の芯がある。麻は強いので雪などで力のかかる軒(のき)部分に使う。岩手ではおよそこの3種を使っている。
 麻は大麻のことで、今は法律で栽培禁止、生えていると保健所が来て引っこ抜く。麻の繊維は麻布、麻縄の原料、昔は無くてはならないもの。だが悪い奴が現れてその煙りを吸ったもんだから使えなくなった。
 世界の森林減少や環境の破壊は、戦争や際限の無い消費文明が引き起こした。これはやっぱり"悪い奴"なのだ。アフガンで思った。援助とはまず欧米のシロモノではなく二〇年前のアフガンの自給的な文化を取り戻すことだ。彼等は尽きない豊かな暮らしを持っていたのだから。(中野雅幸)

編集後記:新年号を出すつもりが、気がつけば立春。

"つもり"と「お告げ」は必ずしも一致しないのであります・・・。N編集長と皆さんのおかげで原稿を載せきれないほどたくさん頂いています。次号は早く出せるかな〜。(木霊のお告げ次第だよ!)/先月八幡平の源太ヶ岳で雪崩遭難事故がありました。川村家が毎春タケノコ採りに行く山です。6月に山頂直下に残る雪田をオシリで滑り降りた(と言うよりコケて落ちていった)ことがあります。心に残る滑り心地でしたが、あそこで雪崩が発生したのだ、思ったら寒くなりました。/雪崩は斜面に降り積もった雪が自重に耐えられずに落ちていく訳ですが、発生のメカニズムは複雑かつ微妙で、完全な予測は非常に難しいようです。積もった雪が時間とともに変態する過程(例:新雪がいわゆるしまり雪に変化するのも「雪の変態」)で、気温、湿度、雪自体の温度などの条件が絡み合って、雪の結晶どうしの結合が弱い「弱層」を形成します。その弱層の上に載った雪が、何かの刺激を受けて滑り落ちていくのが雪崩。/ある斜面での雪崩の危険度を予測するのに、「弱層テスト」というのがあります。雪を掘って円柱状の雪の柱を作り、それを手で引いて円盤状に切れる部分があるかどうかを調べるものです。切れる部分が弱層で、弱い力で切れればそれだけ危険度が高い。/雪崩を避けるために、日程、天候、ルートをよく勘案して行動するのは当たり前ですが、もし雪崩に巻き込まれてしまったら・・・。デブリ(なだれてたまった雪)に埋もれた遭難者は窒息、低体温、衝突による外傷などのダメージを受け、ことに窒息は数分を争う緊急事態。雪崩発生後15分以内に救出しなければまず生還しないとの報告があります。雪崩ビーコン(発信器)、スコップ、ゾンデ(探り棒)は雪崩遭難救助の三種の神器と言われます。/まず雪崩に遭わないこと。遭ってしまったら埋まらないこと。埋まってしまったら、すぐにもがいて脱出すること・探して掘り出すこと。これが出来ない人は危険な雪山へは行かないこと・・・。(FK)
(参考:山と渓谷社「最新雪崩学入門」 北海道雪崩事故防止研究会編)

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