会報木霊の駅

木霊”こだま”のお告げで発行

第 9 号

小野寺靖久さんの御指名

連載白神の名のいわれ。吉川進

青森のナラタケ。吉川進

岩手山は噴火するか?川村晃寛

森は尽きないエネルギー

新入会員紹介

今野美江子さんからのお便り

斉藤真琴さんのお便り

シラスの歯ごたえ。内田明

寒波と戦う虫達。後藤純子

編集後記

お告げのハガキ、始まりました。

 前号で予告しました「はがきチェーンメール」、木霊のお告げを受けた最初の方のお便りを紹介いたします。
 お便りの中で指名を受けた方は、お便りへの返事、ご自身の近況や何でもかんでも好きなことと、次の人を指名するメッセージをお書きの上、会報編集者宛ハガキでお送り下さい。次の号に掲載します。
ところで今回、次のご指名は「虫の先生」・・・もうおわかりですね。次号をお楽しみに!
(弘前市 小野寺靖久さんからのお便り)前 略、突然<お告げ>を頂戴しました。
二十歳の頃、山に寝泊りをしていた。
秋から春の寒い季節は  ブナ、ミズナラなど薪を暖にして過ごした。
その薪割りをしていると たまに越冬している小指大のイモ虫が姿を現す。
5,6個集まったところで、だるま型ストーブの上にのせ、こんがりと焦げ目がついたところで口にほおばる。
高級なカシューナッツのような味が堪らなく美味い。
ところであのイモ虫の正体は一体なんだったのか?
当時は、てっぽう虫と呼びカミキリの幼虫だと思っていたのだが…。
虫の先生、教えて頂戴。

〜新入会員紹介〜
高山 賢一 (Ken-icni Takayama) さん
大正15年生まれ 建築士
くじ・川の会 会長
「社会に一言」
森を守る為に下流の人に課税する。出来るだけビニール製品を造らない、使わない。使い捨て容器はメーカーの責任で処理する。川はみんなの宝物。独占はいけない。

★河川愛護団体「くじ・川の会」は1989年発足、久慈川の水辺の清掃や蛍の放流、野鳥や魚の観察会を行ってきたほか、行政に働きかけ、コンクリート護岸に土をかぶせる緑化工事を実現させたそうです。たまたまですが、うちに川の会が発行した「久慈川の淡水魚」という綺麗な図鑑があります。川への愛情があふれた一冊です(FK)

木霊のお願い・・・会費を納めてくださーい。
実は未納の方がまだいらっしゃいます。でも退会してほしくないので事務局は待っております(涙)。
あとひと月たってもお支払いがないと、木霊のお告げにより会報が届かなくなってしまいます。それは寂しい・・・ので、どうかどうか、よろしくお願いいたします。(中野事務局長へ郵送か郵便振込で)

会員からのお便り平成13年2月10日
今野美江子さん

 はじめまして。
 私は昨年、夏油の山へ行った時に、偶然仙台地区駅長さんとご一緒したご縁で入会させていただきました。
 私の住んでいる所は、大河北上川の河口近く、新・旧両北上川にはさまれた宮城県桃生町です。はるか岩手県の奥羽・北上両山脈を水源とするこの雄大な流れに、私たち宮城県人は限りない恩恵を受けています。奥深い原生林から流れてくる水には、豊富な養分と浄化作用があるときいています。上流の岩手の人たちが源流域を守って下さっているおかげで、下流の宮城県が潤っていることを私は忘れません。下流に住む者として、上流の森林保護の大切さを強く感じています。
 入会にあたり、北上川の上流方面に、会長さんや多くの会員の方がおられることに、川がとりもつ連がりを感じています。皆様からいろいろな情報をいただきながら学び、良い環境を次世代の子供達へ残せるよう考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

林業について

宮古駅 斎藤眞琴
 今さら林業の厳しさを言う必要はないと思いますが、林業は超長期に渡り林を育て丸太として市場に出し経済的評価を受けるわけですが、私は10年くらい前から林業はすでに丸太を売る時代ではなく、林を育てることにより環境を売る時代ではないかと考えています。ではどのように売るのか、私自身もどのように林を評価し、どのように経済活動をしていけばよいのか、どのようなシステムが考えられるのかよくわかりませんが、一般の方々も森の公益的機能とか森が大切であることが理解されてきている今、林業について考えていただきたいと思っています。21世紀は林業の時代になると私は本気で思っています。
"木霊の駅"の皆さんの色々な意見を聞かせていただければ幸いです。
 次回、機会があれば私の仕事内容を紹介したいと思います。

シラスの歯ごたえ

内田 明
 魚屋に並ぶシラスを見ると、アッ買わねば、と反射的に焦る。次の瞬間、厳しく品定めをする。シラスは言うまでもなく、透明で小さいのが美味い。
 関東地方でシラスと言うと、イワシの稚魚のことだ。それを板状にのしたのがタタミイワシ。あぶって食べると美味い。
 三陸沿岸でシラスともシラシとも言うのがコウナゴ。イカナゴ(メロウド)の稚魚だ。春の暖かさと共にやってくる魚である。
 知り合いの漁師がシラス漁の大家で、一人で漁に出る。時々、取れたてのシラスがわが家にまで回ってくる。店で買ったのは新鮮でも歯ごたえはあまり感じないが、わが家に回ってくるシラスは、小さい体でしっかりと骨や身の存在を主張する。さっきまで生きていたんだぞ、と言わんばかりに。
 シラスを箸でつかんでは、皿にいる残りを確かめる。ああ今日、何匹食べたんだろう。小さな命を、いっぱいもらったんだ。だから頑張って生きよう・・・・と思う。
 シラスを取るために、ごく岸近くの危険な岩礁地帯で夜明けまで操業すると聞いた。誰彼ができる漁ではないのだ。
 三陸海岸の断崖絶壁に朝日が輝く頃、漁師は満足して帰途につく。彼の小さな船が取る量は知れたもの、資源をおびやかす程のものではない。
 三陸の海とシラスと漁師が元気でいる限り、私はうまい酒が飲める。


虫さんのおはなし 寒波とたたかう虫たち                

後藤 純子

 暖冬続きだった近年には珍しく、今年の冬は、厳しい寒さと大雪に見舞われました。さて、こんな寒い冬を、昆虫たちはどのように過ごすのでしょうか?
  昆虫の越冬方法は、千差万別です。同じチョウの仲間でも、モンシロチョウやアゲハチョウは蛹で越冬しますが、ミドリシジミは卵で、オオムラサキは幼虫で、そしてルリタテハなどは成虫で冬を乗り切るのです。
  水道管も凍る寒波で、よくも凍らずにいるものだと思いきや、実は虫の体も凍っているのです。でも大丈夫、十分に越冬準備ができた虫は、凍ってもダメージを受けない体をしているのです。凍った虫も、温度が上がったら、何事もなかったように動き出します。
 虫の中には、簡単には凍らない体になるものもいます。このような虫は、不凍液の一種グリセリンを体に蓄積するので、−20℃以下になっても凍らずにいられるのです。
  とはいえ、虫の体が直接水に触れた状態で凍ったりすると、さしもの虫たちも凍死してしまうことがあります。そこで虫たちは、落ち葉や樹皮の下に隠れたり、土中に小部屋を作って潜んだり、まゆを作ったりして体を濡らさない工夫をしているのです。
 一方、以上のような越冬の仕組みを持たない虫たちも多くいます。当然ながら、このような虫たちは寒冷地では生き残れないので、暖かい地方で生活しているのです。

森は尽きないエネルギー 

ちょっと古いデータだが。
地球上の森林の木材セルロースの量は、約8000億トン、1年間に成長しているセルロースの量は370億トン、石油の究極の埋蔵量は3000億トン。世界で1年に消費される紙の量は2億トン(今はもっと多いだろう)。一方、日本の木材消費量は年で約1億立方メートル、日本の森林はその7〜8割くらいが1年に育っている。森林の成長量の凄さが分かるだろう、"尽きないエネルギー"はここからきている。
クリーンエネルギーと言われる核融合の燃料は現在のウランの埋蔵量を考えると、月から得るしかないようだ。宇宙ステイション建設は急務と言う事になるが、森林や太陽エネルギー開発が危機管理上も必要だ。
木材セルロースを科学的処理をするとレーヨン、セロハンなどが作られる。セルロースと硝酸を結合させると火薬になる、また分解してブドウ糖にすると食品、医薬品にもなる、腎臓透析にはセロハンの膜を使用しているそうだ。森はマルチなエネルギーでもあるのだ。   (中野 雅幸)

連 載 白神岳(白神山)の名称由来の考察 <その3>    吉川 進

 オシラサマと白神岳の名称は深く関連をもっているものと思われるが、オシラサマや加賀の白山は白神岳の名称由来のルーツではなく、別なところにルーツがあり、その後、それらが便乗したと考えられないだろうか。
 それをひもとくため、もっと古代にさかのぼってみることにした。

 同じ白神山地に「摩須賀岳」という少し名の知られている山がある。この漢字からだけ、名称の由来を見出すのは難解だ。そこで先述した『津軽領内山沢図』を見ると「摩須賀岳」の名称はなく、同じ位置には「男岳」と記されている。このことから、「摩須賀岳」の名称は、きっと近年になって命名されたものではないかと考えられる。
 大昔、この津軽地方にも住んでいたと言われるアイヌ民族。自然と調和し、自然の恵みや自然を大切にし、ブナ帯文化の先駆者として営々と暮らしていたと考えられる。
 アイヌ民族の時代には、文字はなく、もっぱら伝承による文化だった。アイヌ言葉は今日ほとんど使われなくなったが、一部の地名、津軽言葉やマタギ言葉にその名残をとどめている。
 そこで「摩須賀岳」の名称由来をアイヌ言葉から考えてみることにした。
 津軽地方の山に「マス」のつく名称がいくつかある。そこに共通していることは猿が生息していること。猿のことをマタギは「サル」とは呼ばず「マス」と呼んでいるということに注目する必要がある。これもアイヌ言葉の名残だと言われている。
 獲物が、「サル」では「去る」に通ずることから具合が悪いということで、逆にアイヌ言葉の名残として「マス」をそのまま使っていた。「マス」は、「去る」の反対で「増す」に通ずるからだろうか(?)。
 「摩須賀岳」は「猿」(マス)の居る岳「マスガダケ」ではないだろうか。
 マタギだけではなく津軽地方では、猿のことをマスと呼んでいた。猿の様に身のこなしがすばやかったり、手先の器用な子供達を祖母、祖父らが、よく「マス」と呼んでいたのはつい最近までのことであった。「摩須賀岳」より「マス猿ヶ岳」の方が現地はピッタリだ。
 由来や津軽語の理解できない中央の事務屋さんが、地図に適当な漢字を登場させて「摩須賀岳」となったのではないか。摩須賀岳は昔の名称「男岳」の別名あるいは地元の人達が便利上「マスガダケ」と呼んでいたものではないだろうか。地名には、時々由来の難解な漢字がある。その際、命名ルーツとなる古代人のことを思い浮かべるのもおもしろいことだ。
 地名はアイヌ語と、日本語あるいは津軽語(弁)と共通に解釈出来るものもあり、またその後の社会変化の中にあって地名も変わっているのも数多くあるが、自然、地形等からアイヌ語と照らし合わせてピッタリするところも少なくない。
 そこでこの手法によって「白神岳」の地名由来にせまってみると、
〈白神岳をアイヌ語で分解〉
(白)…シリ→山、山地
(神)…カムイ→神様
(岳)…タク→塊
神の山、あるいは、神の住む山岳ということになる。
 アイヌの皆さんが、豊富な山の幸に恵まれ、生命の源となる清らかな水を産し、それでいて人の出入りを容易に許さない尊厳この上ないこの山を、神の住む山岳として深く崇めたて、命名していたのではないだろうか。すなわち「シリカムイタク」と。結論として、
白神岳の名称由来は、アイヌ言葉のシリ・カムイ・タク(神の住む山岳)にルーツを置き、その後、養蚕が津軽地方に広まり、それに続いて民間信仰のオシラサマが登場した際、呼び名も姿もピッタシの神秘の山を「シラカミ」に発展させ、「白神岳」に定着したのではないだろうか。 
(おわり)

きのこミニ講座 青森のナラタケ

吉川 進

ナラタケの幹(足)につば(鍔)のあるものが
ナラタケ、ないものがナラタケモドキ。
 青森の地方名(呼び名)はおよそ次のとおり。
津軽…サモダシ(似ている呼び名 サワモダシ、サンモンダシ、サワモダセ、サワモダツ)
南部…カックイ ※ハバギ
下北…ボリボリ(ボリ、ボリメキ、オリミキ)
青森産ナラタケは6種類ある。

名前 季節 発生する場所
ナラタケ 春、秋 ミズナラ、カシワなどの朽木、立ち木の根元クロゲナラタケ(ケサモダシ) 秋〜晩秋 ブナなどの倒木、切り株
オニナラタケ(オニサモダシ) 秋 広葉樹やカラマツ、アカマツの切株、枯幹、立ち木の根元
ワタゲナラタケ(ワセサモダシ) 初秋 カラマツの混じった雑木林の地上、林道わきの草中
ヤチナラタケ(ヤヂサモダシ) 初秋 湿地帯の広葉樹の枯幹など
キツブナラタケ(キサモダシ) 春、秋 主にミズナラの切株

(★昨年秋に頂いた原稿ですが、紙面の都合で今まで載せられませんでした。ごめんなさい。春のきのこ採りはしたことないですが、挑戦してみようかな。FK)

岩手山は噴火するか?川村晃寛

連載 なしてあそごさ山あるべ〜のんべのための地圏講座〜

岩手山の噴火が騒がれてから早や3年経とうとしています。以前は関西の人間から「岩手山噴火したんだって?大変だねぇ」などと言われ、全国的にも注目されていたけど、今では有珠山、三宅山の噴火の陰に隠れて話題にすら上りません。我々地質屋の間では日本は短期的な地殻や火山の活動期に入ったとも疑われていています。この2〜3年で、以下の火山が活発化しているのをご存じでしょうか?岩手山は特別でなくなってきました。
有珠山、樽前山、十勝岳、雌阿寒岳、駒ヶ岳(以上北海道)
岩手山、磐梯山、浅間山、富士山、霧島山、三宅島
これらの火山では、噴気活動や火山性地震が目立ってきています。富士山では地下深部の流体(マグマ)の動きに関連があるといわれる低周波地震が昨秋から急増しています。
岩手山の現況はどうなのでしょうか?



グラフは'98からの月ごとの火山性地震の回数を示しています。'98.9の岩手山南西地震以後は、回数が激減かつ低落傾向でもうすぐ終息するように見えます。
しかし、縦軸を対数目盛にするとその下のグラフのように全く違った印象を与えます。'98.10以降は若干活動を弱めながら、ある一定のレベルを維持していると読みとれます。このグラフは地震の大きさを示すマグニチュードを評価していないなど科学的に意味のあるものではありませんが、カタストロフィックで加速度的に増加する自然現象を線形的に把握するための一手法であるといえます。気象庁が「活動は依然高いレベルにある」と言っているのは、この他にも噴気活動が盛んなせいもあります。上のイラストは岩手山を東北道松尾八幡平IC付近から見た感じを描きました。天気が良ければ絵のように黒倉山からの噴気が見えます。
岩手山は近いうちに噴火するでしょうか?それは誰にも分かりませんが、水蒸気爆発程度の比較的小さいものはいつでも起こり得るはずです。ただ、武闘派(!?)火山学者である群馬大の早川先生は以下のようなことを述べています。
「'98.9の地震以降地殻変動は収まっており、地表の熱異常はその余効効果である」と...。

編集後記    「春がきたぞー!!」と風が呼んでいるけど、3月は父ちゃんが忙しくて野山も見に行けませんでした。それを憐れんだか、うちの庭に福寿草とふきのとうが花を開きました。季節の変わり目の微妙な変化を感じるのはいつも楽しいです。/で、ようやく4月初めの日曜日に、マンサクの花が咲いているかどうか、かねて観察地(というほど大袈裟じゃないですが・・・)にしている盛岡郊外の低山へ行ってみました。ところが今年はまだやっと雪が融けただけ、という状態で、マンサクも他の木々の芽もかたーく閉じていました。となると、逆に今春は百花繚乱、怒濤の開花合戦になるのかな、と楽しみになりました。/会報、3月中に発送するつもりだったのですが遅くなってしまいました。皆さま申し訳ありません。 FK